語学を活かして仕事をしたいという人には人気の高い貿易実務ですが、実はとても幅が広い仕事です。
勤務先によって求められるスキルも違えば、収入や労働条件も変わってきます。ハッキリ言えば、同じ能力を持っていても働く場所を変えるだけで結果は大きく違います。オイシイ職場もあれば、ハズレを引いたと思わざるを得ない職場もあります。
ちなみに、私はオイシイ思いをすることが出来た人間です。だからこそ、実情を知っておいて頂きたいなと思います。
貿易実務がある4つの業界
貿易実務の仕事があるのは、大きく分類すると4つの業種に分かれます。商社、メーカー、運送会社、海運業者(乙仲)です。
ここで、まず知っておくべきことは、この4つの業種の相関関係です。簡単にいえば、商社・メーカーは発注者、運送会社・海運業者(乙仲)は受注者ということです。
貿易というのは、国境を超えたモノの売り買いです。商社・メーカーというのは、その商品の売り買いを行う立場です。
そして、売り買いをした商品を運ぶためには輸送しなければいけないということで、運送業者がその役割を果たすわけです。乙仲というのは海上輸送を取り仕切る人達です。
ここで重要なことは、商社・メーカーというのは、運送業者からすればお客さんということです。つまり、力関係としては商社・メーカーのほうが上というわけです。
私は製薬会社で働いていて、工場で生産したものを輸出したり、原材料を輸入するために貿易実務というものとも関わりを持つことになりました。
でも、実際には運送業者にお任せです。輸送スケジュールを決めたら、それを業者に連絡して、必要な書類などは作成してもらいます。社内スタッフの役割というのは業者に書類を作成してもらううえで必要な情報をまとめたり、業者が作成した書類に間違いがないか確認する作業など、どうしても自社でやらなければいけないことだけです。
今だから言えますが、業者さんにはけっこうムチャなスケジュールでのお願いをしていたので、むこうの人は大変だったと思います。
しかも、ウチの会社が取引していたのは日通やクロネコヤマトといった大手業者ですが、そこからさらに下請け業者に仕事が流れることもあり、そのあたりの仕事を行う業者は、さらに大変だったはずです。
要は運送業者や海運会社で働くよりも、商社やメーカーのほうが楽だよということです。こうやって一言で言いきれるほど単純ではないのですが、こういった傾向があるということは覚えておいたほうがいいです。
正社員(無期雇用)と派遣社員
そして、同じ会社で同じ貿易実務に携わるとしても、正社員(無期雇用)と派遣社員では待遇に大きな差が出ます。同年代でも、年収が100万、200万違うことも珍しくありません。
能力的には派遣社員のほうが上であることも少なくないのですが・・・
貿易実務だと、派遣社員でも時給は悪くないので、安易に決めてしまう人もいるようですが、出来る限り正社員(無期雇用)としての可能性を模索したほうがいいです。
今の実力では採用されないという人の場合、派遣社員として数年間実務経験を積んで、その間に語学力を伸ばしておけば正社員(無期雇用)の仕事をみつけるのは難しくないです。(TOEICが900ぐらいあると理想的です。)
本当の実務と海外とのやりとり役
貿易実務というのは、必要な書類を作成して手続きを行うのが業務の基本ですが、そこに付随して取引先とのやりとりも発生します。相手が海外企業だったら、使用する言葉は英語ですが、ここで業務の分担が発生します。
私が貿易という仕事に携わっていた時には、通関書類を作成するといった事務作業は殆ど行いませんでした。担当のスタッフが病気で欠勤したときに代わりに行うぐらいです。
では、何をやっていたのかというと、海外との調整です。相手と交渉して輸出入の計画を立てるといった役回りです。業務の大半がメールと電話で取引先とのやりとりに費やされました。
実際の貿易業務というのは、こういった外向きの仕事と、細かい作業をする内向きの仕事に分かれます。営業と総務といった感じでしょうか。どちらの役割を担うかによって、必要なスキルも違ってきます。
外向きの仕事であれば、貿易実務に関するスキルはそれほど必要なく、資格もいらないでしょう。語学とコミュニケーション能力のほうが重視されます。
一方、内向きの仕事だと、実務のプロフェッショナルであることが求められるので、通関士や貿易実務検定試験といった資格を持っていたほうが重宝されます。逆に語学力については、それほど高いものは求められず、TOEIC600もあれば十分です。
このページでお伝えしたことは少し極端に過ぎる部分もありますが、重要なのは、貿易実務という言葉でひとくくりには出来ないよということです。
仕事内容、求められるスキル、収入、勤務条件
職場によって千差万別です。この事実を意識して、就職活動に取り組むようにしましょう。業界経験のない人は転職サイトなどに登録して、プロからアドバイスをもらってもいいと思います。
自分一人で活動するよりも、理想にあった職場を見つけられる可能性が高いです。