国連や世界銀行といった国際機関で働くためには欧米の大学院で修士号を取得していることが絶対条件です。能力の高い民間人が政府から派遣されてといった特殊ケースを除けば、修士号を取得した後、採用試験に応募するという流れになります。
大学院の専攻は必ずしも国際関係学や開発学である必要はありません。経済、法律、教育、保健衛生等、国際機関で求められている人材は多種多様なので、自分がどんな分野で貢献したいのか決めて、その分野の専門知識を専攻すべきです。
もう一つ日本人が意識したほうがいいのは、専門分野に関する知識だけではなく、自信を持って自分の意見を主張できる人材であることを国際機関は高く評価するということです。
もちろん業務を遂行するための専門知識も重要ですが、様々な文化背景を持つ人間が集まり、時には各国の利害関係がぶつかる政治色の強い世界においては、議論を通じて、自分の意志を貫くことが出来なければ、物事は進みません。
そのためには、高いコミュニケーション能力を身につけることが求められます。
欧米の大学院に留学すれば、授業=ディスカッションのようなものなので、自然に鍛えられると思いますが、このことを意識して積極的に議論に加わることが大切です。
民間企業経由国際機関就職という道
大学院に留学するとなると費用が膨大なものになります。国際機関に就職するためには、レベルの高い大学で学ぶ必要がありますが、一流大学の授業料は年間150〜300万近くになります。
これにプラスして生活費も必要ですし、大学院ともなると教室に座って勉強すればいいということはなく、研究のために色々な人と会ったり、参考文献や情報を求めて専門機関に足を運んだりと、あちこち飛び回らなければならなくなります。
それらの費用も当然自分持ちなので、そういったものも考えると、相当なコストになります。奨学金をもらうといった方法もありますが、これだけの資金を用意するのは無理という人もいるかもしれません。
だからといって諦める必要はありません。
現在、国際機関で活躍している人の中には、民間企業で働いた後、転職したという人が少なくありません。なかには、国際協力とは全く関係のない職業で働いていた人もいます。
http://global.waseda-icc.jp/archives/category/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%A9%9F%E9%96%A2
http://www.icbjapan.org/kawai.html
彼らが、キャリアチェンジに成功したのは、一にも二にもビジネスマンとしての能力が高かったからです。仕事をこなすために必要なスキルというのは、どんな職種でも共通しているので、何か一つの仕事で秀でた人は、別の分野でも活躍出来ます。
ですから、まずは民間企業に就職して、そこからステップアップするという考え方もアリです。
その場合、商社や海外取引のあるメーカー、外資系企業といった、海外の人と働く機会がある会社のほうが国際協力という仕事に活かせる経験を積めます。ODAを受注している企業に就職すれば、直接的に関われる可能性もあります。
ちなみに、民間企業の中でも、今はCSR(企業の社会的社会的責任)として国際協力に取り組んでいる企業がたくさんあります。
http://nantokashinakya.jp/companies/companies/
こういった企業で働くことで、国際協力関連の仕事に携われる可能性もあります。
NGOや青年海外協力隊は?
国際協力を行うNGO団体、青年海外協力隊で働くという考えを持っている人もいるかもしれませんが、こちらも狭い門です。適材適所の人材が求められるため、高い専門能力と経験がある人でなければ採用される可能性はありません。
もしかしたら、国際機関で働くためのステップとして考えている人もいるかもしれませんが、実情としてはむしろ逆で、国際機関で働いていた人がセカンドキャリアとしてNGOでは働くといったケースが少なくありません。
それに加えて、日本の場合、ボランティアや支援者の助けを借りて、少人数で運営している団体が多く、正規雇用枠の絶対数が少ないのが現状です。
未経験者が採用される可能性はゼロに近く、ある意味では国際機関以上に就職が困難と言えます。
青年海外協力隊も同様で、求められている人材の大半が技術者や医療関係の人間なので、こういったスキルを持たない人が採用されるチャンスはごく僅かです。こちらも難関です。
大学院に留学する、民間企業で経験を積む
現実的には、このどちらかを選択することになると思います。1人の社会人として仕事を遂行出来る人間であることが必須なので、どんな職種であれビジネスマンとしての経験を積むことがプラスになります。
ですから、どんな会社でも民間企業で働くというのは悪く無い選択肢であるということは覚えておいてください。